熟成ブルゴーニュ6本を飲み比べ|白も開くまでに時間が必要だった
「開くって、どういうこと?」
2026年11月4日、熟成ブルゴーニュを白3本、赤3本で楽しむワイン会で、そんな質問がありました。
グラスに注がれた白ワインの香りを取り、私は「まだ開いていない」と感じていました。そのワインが持っていると想像したポテンシャルに対して、目の前の香りがずいぶん控えめだったからです。
その後、時間をかけて飲むうちに、香りが広がり、旨みが感じられるようになりました。最初の一口だけではわからない面白さが、そこにありました。
今回は、6本の味わいと時間による変化、料理との組み合わせから感じたことを紹介します。白も赤も、とくに心を動かされたのはメオ・カミュゼ。そして、メオ・カミュゼとドミニク・ラフォンの白赤4本は、「10年後に、また飲みたい」と思えるワインでした。
今回飲んだ熟成ブルゴーニュは、白3本・赤3本
今回のラインナップは、2012年から2017年の6本です。白3本はシャルドネ、赤3本はピノ・ノワール。同じ品種でも、産地や生産者、熟成によってどんな違いを感じるのかを楽しみました。
| 色・品種 | 生産者 | ワイン(AOC名を含む) | ヴィンテージ |
|---|---|---|---|
| 白・シャルドネ | ドメーヌ・サント・バルブ | ヴィレ・クレッセ チュリセ | 2017 |
| 白・シャルドネ | ドメーヌ・メオ・カミュゼ | ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ クロ・サン・フィリベール | 2016 |
| 白・シャルドネ | ドミニク・ラフォン | ムルソー レ・ナルヴォー | 2012 |
| 赤・ピノ・ノワール | ダヴィド・デュバン | ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ キュヴェ・ルイ・オーギュスト | 2017 |
| 赤・ピノ・ノワール | メオ・カミュゼ・フレール・エ・スール | モレ・サン・ドニ | 2015 |
| 赤・ピノ・ノワール | ドミニク・ラフォン | ヴォルネイ・プルミエ・クリュ レ・リュレ | 2017 |
AOCは原産地呼称のこと。表の「ヴィレ・クレッセ」「ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ」「ムルソー」「モレ・サン・ドニ」「ヴォルネイ」が、その産地を示す名前です。ヴォルネイの「プルミエ・クリュ(1er Cru)」は一級畑の表示です。
以下は、今回のボトルを飲んだ私の感想です。ヴィンテージや保管状態などの条件も異なるため、生産者や畑そのものの優劣を決める比較ではありません。
ワインが「開く」ってどういうこと?
ワインが「開く」とは、控えめだった香りが広がったり、味わいの要素が感じ取りやすくなったりする変化を表す言葉です。
では、私は今回、なぜ注がれた直後に「まだ開いていない」と感じたのでしょうか。
香りを取った瞬間、そのワインが持っていると想像したポテンシャルに対して、今感じられる香りがずいぶん控えめだったからです。
初めて飲むワインでも、これまでの経験から「もっと香りや味わいが出てくるのではないか」と、ある程度の見当がつくことがあります。
もちろん、それは最初の段階では仮説です。時間を置いてもう一度香りを取り、飲んで確かめる。予想どおりに変化することもあれば、そうならないこともある。その仮説と検証を繰り返すことで、自分なりの判断の精度が育ってきたのだと思います。
今回の白2本では、飲み始めてから1時間以上経つと香りが広がり、旨みも感じられるようになりました。「まだ本来の表情が出ていないのでは」という最初の見立てを、その後の変化で確かめられた体験でした。
「開いていない」は、そのワインへの低い評価ではなく、「この先、もっと表情が出てくるかもしれない」という期待を含んだ言葉でもあるのです。
白3本の比較|時間とともに印象が変わった
ドメーヌ・サント・バルブ|ヴィレ・クレッセ チュリセ2017
最初の白は、ブルゴーニュ南部のマコネ(マコン地区)から。ドメーヌ・サント・バルブのヴィレ・クレッセです。産地としてはマコン地区ですが、このボトルのAOCは「ヴィレ・クレッセ」。
ゴールドの色合いに、すりおろしたリンゴ、はちみつ、バター、洋梨を思わせる香り。最初から熟成を感じ、10分ほどで開いた印象でした。
酸は穏やかで、口当たりは滑らか。厚みとコクがあり、時間が経つとさらに旨みを感じました。
この白でとくに印象に残ったのは、牡蠣との組み合わせです。料理との相性については、後ほど詳しく紹介します。
ドメーヌ・メオ・カミュゼ|ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ クロ・サン・フィリベール2016
ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイのクロ・サン・フィリベール2016は、今回、白の中で最も印象が変わった一本です。
最初に感じたのはリンゴや白い花。サント・バルブと比べると軽く爽やかでしたが、まだ十分に香りが出ていないように感じました。
ところが、飲み始めてから1時間以上経つと、香りが華やかに。アプリコットやドライフルーツも感じられるようになり、口に含んだときの旨みがぐっと増してきました。
酸、ミネラルを思わせる感覚、コク、旨みが調和している。時間が経ってもへたる感じがなく、むしろ旨みが増していくところに強く惹かれました。
今回の白で、私が一番好きだったのはこのメオ・カミュゼです。オート・コート・ド・ニュイでこれほどの味わいを楽しめることも、うれしい驚きでした。
ドミニク・ラフォン|ムルソー レ・ナルヴォー2012
ムルソーを代表する著名な造り手、ドミニク・ラフォン。その名を冠したムルソーの2012年、ヴィンテージから14年を経た一本です。白ワインの名手による熟成ムルソーということで、飲む前から期待が高まっていました。なお、今回のボトルは「ドミニク・ラフォン」名義です。
こちらは濃いゴールド。リンゴ、桃、レモン、白い花を感じ、開いてからはナッツやはちみつの印象も出てきました。
私がムルソーに思い描いていたのは、樽を感じるリッチな味わいでした。ところが今回、より印象に残ったのは、しっかりとした酸とミネラル感。14年を経ても、引き締まった表情があったのは意外でした。
レ・ナルヴォーはムルソーの斜面上部に位置する畑です。この位置も、今回感じた酸や引き締まったミネラル感に関係しているのかもしれません。畑の位置については資料で確認できる一方、味わいとの結びつきは、飲んで感じた私の考察です。
最初は控えめでしたが、こちらも1時間以上経ってから開き、旨みとのバランスがよくなって、とてもおいしく感じました。
ただ、さらに時間が経ったところで比べると、私がより惹かれたのはメオ・カミュゼの旨みの増し方でした。ムルソーの名を見て抱いていた期待もあり、この結果は意外でした。
白2本はヒラマサのカルパッチョと合わせましたが、そのときはまだ開いていないと感じていたため、料理との相性については判断を保留しています。
赤3本の比較|軽やかさと、時間とともに増す旨み
ダヴィド・デュバン|ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ キュヴェ・ルイ・オーギュスト2017
ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイのキュヴェ・ルイ・オーギュスト2017は、熟成香よりも果実の印象が前に出ていました。
ラズベリーレッドの色合いに、チェリーや赤い花を思わせる香り。エレガントで軽やか、タンニンはしなやかでした。
時間による大きな変化はあまり感じませんでした。今回の一本は、今の果実味と軽やかさを楽しみたいと感じるワインでした。
メオ・カミュゼ・フレール・エ・スール|モレ・サン・ドニ2015
今回の赤で最も心を動かされたのは、コート・ド・ニュイの村名ワイン、モレ・サン・ドニ2015です。メオ・カミュゼ・フレール・エ・スールが手がける、村名クラスの一本です。
チェリー、プラム、スミレ、スパイス、紅茶。華やかさに少し熟成の気配もあり、飲み頃に入ってきたのかなと感じました。
それでも、果実味はまだ活き活きとしています。酸が心地よく、タンニンはしなやか。エレガントなのに力強く、液体そのものにパワーと旨みがある、というのが私の印象です。
時間が経つと香りが少し強まり、旨みも増していく。へたる感じがなく、「ゆっくり、ずっと飲んでいたい」と思いました。
今飲んでも十分においしい。でも、豊かな果実味と酸、力強さから、もっと先の姿も見てみたくなりました。
ドミニク・ラフォン|ヴォルネイ・プルミエ・クリュ レ・リュレ2017
こちらはコート・ド・ボーヌの一級畑(1er Cru)、ヴォルネイのレ・リュレから造られたピノ・ノワールです。
今回楽しみにしていたのは、白ワインの名手ドミニク・ラフォンが造る、コート・ド・ボーヌの一級畑の赤と、コート・ド・ニュイで名高いメオ・カミュゼがフレール・エ・スール名義でリリースする村名の赤を比べることでした。
同じピノ・ノワールでも、地域も格付けも造り手も異なる2本は、どう感じられるのか。そんな期待を持って飲みました。
ラズベリーレッドの色合いで、チェリー、プラム、スミレ、スパイス、紅茶を思わせる香り。香りの方向は、私にはモレ・サン・ドニと似て感じられました。
こちらも十分においしいワインでした。ただ、今回の2本を比べると、メオ・カミュゼほど時間とともに旨みが増していく感覚はありませんでした。
ボーヌの一級畑と、ニュイの村名。今回の私の好みは、メオのモレ・サン・ドニでした。
その一方で、このヴォルネイがさらに時間を重ねたとき、どう変わるのかも気になります。今回の印象だけで飲み頃の終わりを決めず、また出会いたい一本です。
牡蠣と熟成シャルドネ|旨み同士が重なった
料理との組み合わせで、いちばん意外だったのは牡蠣です。
私には「牡蠣にはフレッシュなシャルドネ」というイメージがありました。ところが今回の牡蠣は生ではなく、さっと湯通ししたもの。
ここに、ドメーヌ・サント・バルブのヴィレ・クレッセ チュリセ2017を合わせると、牡蠣の旨みと熟成したシャルドネの旨みが重なり、とてもよく合いました。
熟成した白の滑らかさやコクを楽しみながら、牡蠣のおいしさも感じられる。自分の中では「旨み同士のかけ算」と呼びたくなる組み合わせでした。
同じ牡蠣でも、調理の仕方が変わると合わせたいワインのイメージが広がる。今回、持ち帰れた発見の一つです。
格付けだけでは決まらない、自分の好きな一本
白はブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイとムルソー。赤はコート・ド・ニュイの村名モレ・サン・ドニと、コート・ド・ボーヌの一級畑ヴォルネイ・プルミエ・クリュ。
今回、私がより心を動かされたのは、白も赤もメオ・カミュゼでした。
ブルゴーニュを選ぶとき、畑を重視するか、生産者を重視するかは悩ましいところです。今回の体験からは、改めてメオ・カミュゼのワインをもっと飲んでみたいと思いました。
ただし、この飲み比べだけで「生産者の違いが畑の違いに勝った」とは言えません。産地もヴィンテージも違い、保管状態や当日の開き方なども関わります。
その条件の中で、自分はどんな味わいに心を動かされたのか。格付けと一緒に、自分の感覚も大切にしたいと思える比較でした。
次に飲むなら、抜栓のタイミングも考えたい
白ワインは1時間前には抜栓していたとのことでした。それでも、メオ・カミュゼとドミニク・ラフォンは、飲み始めてからさらに時間を必要としました。
料理が出てくるタイミングでワインも楽しみたいと考えると、次に同じようなワインを提供するときは、2時間ほど前に抜栓して、状態を見ていくのもよさそうです。
これは今回の経験から、今後試してみたいと思った工夫です。「10年前後のワインはすべて2時間前に抜栓する」というルールにしたいわけではありません。
抜栓して瓶のまま待つことと、グラスやデキャンタで空気に触れさせることも、同じ条件ではありません。ボルドーワイン委員会のサービス解説でも、まず少量を注ぎ、軽くグラスを回す前後で香りを確かめて、空気に触れさせるか判断する方法が紹介されています。
まず香りを取り、少し飲み、時間を置いてまた確かめる。その一本に合わせて考えることを、次の機会にも続けたいと思います。
10年後に、また飲みたい4本
飲み終えて思ったのは、「この4本を、10年後にもう一度飲んでみたい」ということでした。
- ドメーヌ・メオ・カミュゼ|ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ クロ・サン・フィリベール2016
- ドミニク・ラフォン|ムルソー レ・ナルヴォー2012
- メオ・カミュゼ・フレール・エ・スール|モレ・サン・ドニ2015
- ドミニク・ラフォン|ヴォルネイ・プルミエ・クリュ レ・リュレ2017
10年後のほうがおいしいと、今から決めているわけではありません。今の美味しさを覚えておいて、その先の姿も知りたいのです。
そのとき、ワインはどう変わっているのか。自分は何を感じるのか。
経験から予想し、グラスの中で確かめる。今回の会で楽しんだことを、もっと長い時間の中でも続けてみたい。熟成ブルゴーニュの面白さを、そんなふうに感じた一夜でした。
