フランス アルザス地方は、フランスワインにとって欠かせない存在のワイン生産地です。特にリースリングをはじめとした高品質な白ワインの産地として世界的にも有名です。
この記事では、アルザス地方のワインの特徴についてワイン初心者にもわかりやすく解説していきます。また、おすすめのアルザスワインもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧になってください。
▼アルザス ワインの特徴がわかる
▼おすすめのアルザスワインがわかる
▼自分好みのワインが見つかるチャンス
それではさっそくいってみましょう!
アルザスワインの特徴
アルザス地方
フランス北東部、ドイツとの国境に位置します。西側には南北にヴォージュ山脈が連なり、西からの湿った風をさえぎり、降雨量はフランスで最も少なく日照量が多い地域です。北部に位置しつつも温暖な気候によりブドウが完熟し、辛口だけどボリュームのあるワインが造られます。
アルザスワインのブドウ品種
ワイン生産量のうち9割は白ワインで、ロゼが1割弱、赤はごくわずかです。また、生産量のほとんどはドイツ系の白ワイン品種であることが特徴の一つです。フランスワインの多くはフランス由来のブドウ品種でワインが造られるので、アルザスは少し異質な感じがします。
単一品種からつくられることが多く、フランスワインでは珍しく品種名をラベルに記載することが一般的です。これもドイツっぽいですね。
アルザスの代表品種① リースリング
アルザスを代表する高級白ワイン品種です。アルザスのリースリングの多くは辛口タイプ。香りはとても華やかで、青リンゴやレモンの柑橘系に白い花、ペトロール香と呼ばれる石油っぽい香りも特徴です。口あたりはオイリーで少しボリュームがあり、その奥にあるしっかりとした酸味が特徴です。北の産地によるしっかりとした酸と完熟した果実のボリュームが共存しています。高品質なリースリングは白ワインの女王シャルドネに匹敵する味わいです。
アルザスの代表品種② ゲヴェルツトラミネール
ライチの香りが印象的なアロマティックな白ワイン。ライチ香がしたらゲヴェルツトラミネールと思ってほぼ間違いないでしょう。ほかにもトロピカルフルーツやバラのような香りも。白ブドウですが果皮はうす紫色をしています。スパイシーな要素もあり、意外な組み合わせとして中華料理やエスニックな料理とのペアリングも鉄板です。
アルザスの代表品種③ ピノ・グリ
白ブドウの中では、ふくよかなボリュームと果実味を持つブドウ品種です。味は落ち着いた印象でそれ程強くなく、まろやかでコクを感じさせる味わいになります。白ブドウですがブドウの果皮はうす紫色をしています。
アルザスの代表品種④ ミュスカ
ミュスカは世界中で栽培されている白ワインのブドウ品種です。アルザス地方ではミュスカ ダルザスと呼ばれています。マスカットやモスカートなどとも呼ばれています。日本ではマスカットとして、食用でも人気ですね。イタリアの甘口スパークリングである、アスティの原料でもあります。
アルザスワインの歴史
アルザスワインはブドウ品種や品種名表示、ボトルの形(フルート型)など、ドイツ文化の影響を大きく受けています。それはアルザスの歴史と大きく関係しています。
アルザス地方のワイン生産は、古代ローマ時代にまで遡ることができます。中世になると、修道院や貴族の所有する領地でのブドウ栽培が広まりました。修道院はブドウ栽培とワイン生産の中心地となり、ワインの品質と発展に大きく貢献しました。
ところが、17世紀から19世紀にかけて、アルザス地方はドイツ帝国の支配下になりました。この時期に、ドイツのワイン文化の影響が強まり、品種やスタイルがドイツワインに近いものとなりました。
19世紀末、アルザス地方は再びフランスに編入されました。フランスのワイン文化との交流が始まり、フランスのワイン製造技術や品種の導入が行われました。フランスのワイン法に基づいた規制が導入され、品質の管理が強化されました。
その後、アルザス地方は第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に数度の領土変動を経験しています。
ドイツ国境という土地柄、幾度も戦火に巻き込まれ領土変動を繰り返してきています。現在はフランス領となっていますが、ワインにおいてはドイツの影響が今なお色濃く残っているのです。
アルザスの主要なAOCワイン
ACアルザス
アルザスのほぼ全域を包括するAOC。ワインは「白・赤・ロゼ」。ブドウ品種は多種多様で、白はリースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノグリ、ミュスカなど約10種。赤とロゼはピノ・ノワールからつくられます。多くの場合は単一品種からつくられ、ラベルに品種名が表記されます。
ACアルザス グランクリュ
2023年現在、51のリューディー(小区画)がグランクリュとして認められています。ワインは白のみです。ブドウ品種はリースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノグリ、ミュスカの4つが認められています。
グランクリュワインとといえばブルゴーニュが有名ですね。ブルゴーニュのグランクリュだと10万円オーバーも当たりまえですが、アルザス グランクリュだと1万円を切る価格帯も多くあります。フランスワインで、同じグランクリュだからといって、単純比較はできないので注意してくださいね。
ACクレマン ダルザス
アルザス地方で生産されるスパークリングワイン。クレマン ダルザスは、フランス国内で消費されるクレマンの第1位を誇っています。意外な感じがしますね。
ブドウ品種は、白がリースリング、ピノブラン、ピノ・ノワール、ピノグリ、オーセロワ、シャルドネの6種。ロゼはピノ・ノワールのみ。収穫は手摘みのみ、瓶内二次発酵による製法に限られます。澱との接触による瓶内熟成期間は最低9ヶ月と規定されています。ちなみにシャンパンは、ノンヴィンテージで15ヶ月以上(そのうち澱との接触は最低12ヶ月)、ヴィンテージで36ヶ月以上と定められています。
遅摘みワイン・貴腐ワイン
アルザスでは、一定の条件を満たした甘口ワインに「ヴァンタンジュ・タルティブ(遅摘みワイン)」、「セレクション・ド・ノーブル(貴腐ワイン)」と表記することができます。甘口で等級分けするドイツのワイン文化と似ていますね。
ブドウ品種は、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノグリ、ミュスカの4種で認められています。
アルザスワイン おすすめ3選
①ヒューゲル ゲヴェルツトラミネール クラシック
ヒューゲルは、アルザスの代表的な生産者です。ドメーヌとして自社畑25haに加え、100ha分のブドウを契約農家から買い付けネゴシアンものとしてワインをつくっています。ネゴシアンものは「クラシック」と名付けられています。
搾汁機は圧力をポンプでかけるのではなく、ブドウの自然の重みによってゆっくりと時間をかけて搾汁し、最初に絞られた果汁のみを使用して贅沢にワインは造られます。各品種の持つ個性を尊重し、ブドウの質を最優先とするため、年によってはほとんど収穫とならない場合もあります。
ブドウ品種はゲヴェルツトラミネール。非常にアロマティックな白ワインです。ライチやオレンジ、バラの花、スパイスのニュアンスもあります。
「ワインってこんなにも香るものなのか」というのをぜひ体験してみてほしいです!
②トリンバック アルザス リースリング
アルザスの名門ワイナリー「トリンバック」。典型的なアルザス リースリングの造り手として国内外から高い評価を得ています。また、グラン・クリュの保有面積の高さでも知られており、アルザスにおけるグラン・クリュが全体のわずか4%しかない中、トリンバックでは60haの所有畑のうち30%をグラン・クリュが占めています。
トリンバックではブドウ本来のフレッシュな酸を保つため、ピノ・ノワール以外は一切マロラクティック発酵を行いません。また、果実味を損なわないよう、全てのワインは収穫の翌年の春から夏にかけて瓶詰めし、一定期間の瓶内熟成を経てからリリースされます。
ブドウ品種はリースリング。レモンや白桃にペトロール香、しっかりとした酸味とオイリーな味わいのバランスが素晴らしいです。
③ドメーヌ ボット ゲイル アルザス リースリング グランクリュ マンデルベルグ
フランスの年間最優秀白ワインTOP30に3年連続で選出された フランスを代表する白ワイン生産者「ドメーヌ ボット ゲイル」。現当主の当主ジャン・クリストフ・ボット氏は、ムルソーの名手ドミニク・ラフォン氏に師事した後、1993年から家業のドメーヌを継承。「全ては上質なブドウを収穫できるかどうか。醸造はブドウのポテンシャルを引き出すだけ」と考え、品質の高いブドウを得るため、全ての畑をビオディナミで栽培し、短い剪定を行い収量を抑え、密植度もかなり高くしています。補糖・補酸はもちろん人口酵母や酵素も一切加えず、無清澄で醸造、自然なワイン造りをしています。
ACアルザス グランクリュです。ブドウ品種はリースリング。ビオディナミで栽培し、高密植、低収量(30-35hl)のブドウを、シュール・リーで11カ月樽熟成しています。
レモンや白桃にペトロール香。味わいは凝縮した果実味としっかりとした酸に繊細なみならるが溶け込み絶妙な味わい。これぞグランクリュ リースリングと言える高貴な味わいです。
さいごに
今回はフランス アルザス地方のワインの特徴とおすすめワインについてご紹介いたしました。
アルザスは白ワインの名産地。特にリースリングからつくられる白ワインは、ワインの女王シャルドネに匹敵するくらいのエレガントな味わいです。それでいて価格はそこまで高くないので、特別な日に美味しい白ワインが飲みたい時にはもってこいだと思います。
みなさんのワイン選びの参考になれば嬉しいです。楽しいワインライフを!