ソムリエ協会 例会セミナー「オーガニック、サステナブル、ビオワインとコントロールおよび従来型ワイン造り」に参加してきました。
今回は近年話題のオーガニックワインについて、120分間のセミナーです。白3種、赤5種のテイスティングありで、ソムリエ協会会員なら参加費無料です。
目から鱗の120分の内容をギュッと絞ってわかりやすくご説明します。
有機農業(英:オーガニック、仏:ビオロジック)
有機農業(英:オーガニック、仏:ビオロジック)とは、「化学肥料および農薬を一切使用せず、遺伝子組み換え技術を使用しない」ことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷を限りなく低減した農法のことである。
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)が定めた「有機的に生産される食品の生産、加工、表示および販売に係るガイドライン」が世界的に採用されていて、2010年にEU、2013年位アメリカ、日本でもこのガイドラインに基づいて有機JAS規格が制定されています。
つまり、有機農業に関する定義は世界で共通の認識が確立されているということになりますね。
日本で「ビオワイン」と呼ばれるものは、一般的にこのビオロジック、つまり化学肥料や農薬、遺伝子組み換えを使用せず生産されたブドウを使って造られたワインにことを指しています。
地元北海道のお話の中で、「北海道ワイン」さんがJAS認証取得畑を保有しているが、日本ではまだまだ数える程ということでした。
ビオディナミ
有機農法の一種で「化学肥料および農薬を一切使用せず、遺伝子組み換え技術を使用しない」のに加え、「農事暦を用いた栽培スケジュールにしたがって栽培さ入れる農法」です。
農事暦とは、月や惑星の動きと植物の成長を調和させることを取り入れた栽培スケジュールもこと。特に月の引力というのは潮の満ち引きに影響し、人体にも影響があると言われているそう。髪の毛も満月に向かう時が一番伸びるそう。おどろきです。
化学肥料や農薬の代わりに「プレパラシオン」と呼ばれる調合薬を使うのもビオディナミの特徴。牛の角にシリカを詰めたものや、イラクサの浸出液などがあり、501、502等、番号がつけられています。
月の満ち欠けで、植物が下に引っ張られる時に、ブドウの根が生育するよう蒔くのが500番、植物が上に引っ張られる時は、ブドウの葉に作用する501番を蒔くという。植物の自然に成長するサイクルに合わせて栽培するということですね。
減農薬栽培(英:サステナブル、仏:リュットレゾネ)
減農薬栽培とはその名の通り、化学肥料や農薬を極力減らして栽培する農法です。有機農法が一切使用しないのに比べて、若干緩和されています。
「世界はサステナブルなブドウ栽培にほぼ移行している」と言われています。
20世紀頃に世界は戦争によって農地が荒廃したのに加え、農業労働力不足や天候不順などによって、不安定だった農作物の収量安定や農業労働時間の減少など、農薬によって食糧難を救ってきた歴史があります。
ブドウ作りもその流れに当然ありましたが、近年になって農薬を使い続けていくことで畑が痩せていき、品質の良いブドウが生育されにくくなっていることがわかりました。
20世紀には農作物を救った農薬ですが、人体への影響も踏まえて、副作用について近代になって段々と見直されてきているという流れです。
有機ワイン(英:オーガニックワイン、仏:ビオロジックワイン)
法律上、有機ワインと表示できるのは、「有機農業により生産されたブドウを用い、原料の収穫、運搬、受け入れ、醸造、瓶詰め、出荷の全ての製造ラインにおいて、有機ワインでないものと隔離され、しかも公的機関の認証を受けたワイナリーにおいて生産されたものでなければならない」となっています。
つまり、有機農業で生産されたブドウで造られただけではダメで、生産ライン全てを有機ワイン以外と隔離しなければ認められないのです。
「生産ライン全てを有機ワイン以外と隔離」というのは、特に小規模な生産者にとって極めて難しい基準と言えるでしょう。醸造設備への設備投資はもちろん、建物に関しても相当な設備投資が必要です。
一方で、認証を受けたからといってワインが必ずしも高く売れるわけでもありません。経営者としては、簡単な判断にはならないはずです。ゆえに有機ワインの認証を受けたワインは、消費者側も生産コストがかかっていることを認知しておく必要がありますね。
ヨーロッパ(EU)の有機ワイン認証は2012年に制定されていて、規定に合致したワインは「Vin Biologique」のラベルへの表記が認められています。日本では「有機JAS規格」の認証を得ると、有機ワインと名乗ることができるようになります。
有機農法で造られたブドウによって造られたワインでも製造ラインの隔離はせず認証をとっていないワイナリーや、認証のできるずっと前から認証相当のワイン造りを行ってきたワイナリーの中には、あえて認証を取らないこともあります。
前者はワインの味わいの追求と経営判断、後者は最近できた認証をあえて取得しなくても消費者に十分認知されていることなどが理由として考えられます。「認証がないからといって有機なワインではないと言えない」ことだけは知っておきましょう。
ビオワインやサステナブルワインの味わい
今回のセミナーでは、ビオワインやサステナブルワイン 白3種、赤5種のワインテイスティングがありました。
驚きだったのは、8種のワイン全て色合いが透明だったこと!そして、イヤな還元臭がないんです。
これは自分にとって結構サプライズで、自分が飲んできたいわゆる”自然派ワイン”と呼ばれるワインの多くは「濁って」いました。フィルター等をかけず、亜硫酸も添加せず、極力自然な造りをしているのでそういうものだと思い込んでいました。また、生産者さんでさえもこだわり抜いたワイン造りの証として堂々とリリースされている節さえ感じていました。
でも違いました。山梨県のシャトーメルシャンの醸造家 安蔵 光弘氏の談話が紹介されました。安藤氏は日本を世界の銘醸地にするために奮闘する醸造家で、2021年に映画化された日本ワイン発展において欠かすことのできない人物です。
質問者:「日本の自然派ワインの現状をどう分析していますか?」
安藤氏
「いいワインを造る自然派はたくさんいるんですよ。問題なのは自然派を言い訳にした欠陥ワインの存在です」
「有機栽培は素晴らしいことですが、それが目的ではいけないということです。」
「濁りって、すごくリスクが高いんですよ」
「プロが忖度して欠陥ワインを指摘しなければ、日本ワインの将来はありません」
つまり、自然派ワインにありがちな濁りのあるワインや還元臭のあるワインは、いくら生産者がこだわってつくっていたとしても単なる「欠陥ワイン」とぶった斬っています。
世界でも濁りのあるワインは「欠陥ワイン」として、共通の認識であるのです。
有機栽培はワインを美味しくするための手段としてあるべきであって、味わいよりも有機栽培自体を目的にしている生産者が多いことに危機感を持っているということです。
従来のワイン造りは悪なのか?
結論から言うと、そんなことはまったくありません。よく言われる亜硫酸はそもそもブドウがが発酵する過程で、ブドウ自体から造り出されるものです。
ブドウ自体の生存本能とも言うべき現象ですが、亜硫酸がないとワインはあっという間に品質劣化してしまうのです。
あのルロワにビオディナミを伝授したとされる「ビオディナミの伝道師」と称される自然派の鬼才ニコラ・ジョリーでさえも少量の亜硫酸を添加します。それは「自分く蔵を出てからどんな状態で流通するかわからない状況で、品質を保てないリスクが大きすぎるから」と言われています。
亜硫酸無添加ワインがあるじゃないか!
スーパーでよく見かける亜硫酸無添加ワイン。ありますよね。いかにも体に良さそうです。
でもこれはなんと加熱殺菌処理をして、ワインの劣化を防いでいるんです。加熱殺菌って、それはもはやワインと呼べない代物ですよ。
亜硫酸を無添加にするために加熱処理するなんて、それこそ手段と目的を履き違えたワインづくりでしょう。加えてもう一つ、亜硫酸は添加してないとしても、先の述べた通りブドウ自身が亜硫酸を作り出すので、亜硫酸無添加ワインの中にも亜硫酸は入っています。
「亜硫酸が入っているワインは頭が痛くなるのよ〜」
それは多分、単なる飲み過ぎが原因です。笑
さいごに
今回改めて勉強させてもらい、とても参考になりました。
特に「自然派を言い訳にした欠陥ワイン」と言うフレーズは心に響きました。ワインを紹介する立場として、気をつけなければならないことです。
今回テイスティングしたワインはどれも美味しかった。変な癖もなく単純に美味しかった。これがビオワイン、サステナブルワインなんだと感じれたことは、大きな収穫です。
今後もみなさんの参考になる情報をご紹介できればと思っています。
最後までご覧くださりありがとうございました!