ワインのトリセツ

自然派ワインの種類と自然派ワインを選ぶ際の注意点についてわかりやすく解説

身体に優しくておいしいワインが飲みたい人

「”自然派ワイン”という言葉をよく聞くけど、どんなワインが自然派ワインというのか、自然派ワインにはどういう種類があるのかよくわからない」

「自然派ワインを買ったけど、味がいまいち好みじゃなかった」

本記事では、自然派ワインと呼ばれるワインの種類と自然派ワインを選ぶ際の注意点をわかりやすく解説していきます。

自然派ワインの種類

自然派ワイン、フランス語では「Vin nature(ヴァン・ナチュール)」と言います。 英語だとナチュラルワインですね。一般的に、有機農法でつくられたブドウのみを使用し、醸造から瓶詰までは酸化防止剤の使用をなるべく抑えてつくられたワインが自然派ワインです。

有機農法

農薬や化学薬品を極力使わない、あるいは一切使用しないで農産物をつくる農法

有機農法にも様々な種類がありますが、代表的な3つの有機農法についてご紹介します。

①減農薬農法(リュット・レゾネ)
  • 農薬や化学肥料を最小限使用
  • このブドウで造られるワインの呼び名「オーガニックワイン」
②ビオロジック
  • 農薬や化学肥料を一切使用しない
  • このブドウで造られるワインの呼び名「ビオワイン」
③バイオダイナミック農法
  • 農薬や化学肥料を一切使用しない
  • 月の満ち欠けなど天体のリズムに従う
  • このブドウで造られるワインの呼び名「ビオディナミワイン」

以上のように、「有機栽培で育てられたブドウ」から造られるワインには、いくつか呼び名があります。

注意が必要なのは、自然派ワインと呼ばれるにはこれらの有機栽培のブドウを使用することのほかに、醸造過程における自然なつくりをしていることも含まれることです。具体的には、酸化防止剤を極力使用しないこととや、培養酵母ではなくブドウの果皮に付着した野生酵母を用いることが必要です。

つまり、ビオロジック(無農薬・化学肥料の使用なし)でつくられたブドウを使用しても野生酵母ではなく培養酵母を使用すると、一般的には自然派ワインと呼べないのです。

ここが非常にややこしいところですのでもう一度整理すると、有機栽培で作られたブドウを使用して、醸造過程においてもナチュラルな造りをしてこそ”自然派ワイン”というわけです。

自然派ワイン

有機農法ブドウ + ナチュラルな醸造

自然派ワインのメリット

これらのように手間暇をかけて造られた自然派ワインは一般的に次のようなメリットがあります。

  • 二日酔いになりずらい
  • その土地・気候(テロワール)ならではのワインの味わいになる

農薬等を使わないことで、体に優しいワインになります。人によっては、ワインを飲んだ翌日には頭がガンガンするようなことがありますが、自然派ワインではそういった症状が出にくいと言われています。

畑本来の自然な力で育てられたブドウと、ブドウ生育の過程で自然に果皮に付着した野生酵母を用いて発酵させることで、テロワールと呼ばれるその土地の土壌や気候などブドウが生育される環境全般をワインの味わいに忠実に表現しやすくなります。

自然派ワインのデメリット

一方で、自然派ワインにはデメリットもあります。

  • ブドウが病気になる可能性
  • 高価になりがち

農薬等を使わないとブドウが病気になりやすくなったり、野生酵母では発酵がうまくいかなかったりすることもあるわけです。手間暇かけてつくったブドウがワインにならないリスクがあるということです。これはワイン生産者にとって、大きな経営リスクです。

病気にならないようにするために、ブドウ栽培には多くの手間ひまがかかります。コストがかかる分、ワインの価格は高価にならざるを得ません。高価になることがデメリットと呼んでいいかは人によって分かれるところではありますが、少なくても価格は高くなる傾向にあるということです。

自然派ワインを選ぶ際の注意点

自然派ワインには明確に定義がありません。オーガニック認証は国や組織によって基準が異なり、無農薬であることをあえて表に出さない生産者もいれば、自然にこだわるあまりワインのおいしさを引き出しきれていない生産者がいるのも現実です。

ロマネ・コンティなど名だたる超有名ワインを生産するブルゴーニュの「DRC」は完全無農薬なビオワインでありますが、自ら自然派ワインであることを全面に出していません。自然なつくりは、美味しさとテロワールを最大限表現したワインを造るための手段であって、それ自体が目的ではないということなのかもしれません。

最大のデメリット「還元臭」

自然派ワインに多く見られるのが独特な「還元臭」です。還元臭とは、ビニールのような香りに例えられたり、酸化したような香りです。もちろんすべての自然派ワインに還元臭があるわけではありませんが、”自然派ワイン”というと還元臭をイメージしやすいのも事実です。

還元臭があることで、ワインのもつ様々な香りが楽しめなくなることもあるのです。そんな理由から、ワイン愛好家の中には”自然派ワイン”を好まない人が少なくありません。

先に挙げたようなDRCのような生産者のつくるワインにはもちろん還元臭はありません。自然なつくりをすることで、ブドウのもつエレガントで複雑な香りを失っては本末転倒ですからね。

自然派ワインを選ぶ際には、信頼できるワインショップの店員さんに味わいを聞いたりしながら自分好みの生産者を見つけていきましょう。

要注意!「酸化防止剤 無添加ワイン」

スーパーで見かける「酸化防止剤 無添加ワイン」。一見、体に良さそうですが注意が必要です。

そもそも酸化防止剤はワインの保存に必要なので、使用する量は最小限にするにしても超高級ワインでも使用されています。ワインは造られてからすぐ飲む訳ではありませんし、長期間におよぶ移動もあります。ワインの品質を保つために必要で、人体に影響のない量が添加されているのです。

では、酸化防止剤 無添加ワインはどうしているのか?

実は、ワインを加熱消毒したりフィルターにかけたりして、酸化防止剤を添加しなくてもある程度ワインが悪くならないようにしているのです。加熱などしたら風味も何もあったものではありません。そうなるともはや、ワインと呼んでいいのかレベルの飲み物でしょう。

また、ブドウにいたっては有機栽培ではない可能性も低くはないでしょう。自然派ワインをつくるにはとても手間ひまがかかることは前述したとおりですので、1000円以下の価格帯にするには非現実的だからです。

”酸化防止剤 無添加ワイン” 一見体に良さそうなネーミングですが、実のところ中身はどうなのかはわからないという飲み物ですので、体に優しいワインを求めている方にはオススメできない飲み物です。

さいごに

本記事では、近年話題の自然派ワインの種類や選ぶ際の注意点について解説しました。

個人的には、いろんなワインを飲んで、相場感を持つことが大事だと考えています。あまりにも安すぎる自然派ワインにはくれぐれも注意しましょう!名ばかりの自然派ワインで、ワインが嫌いになるようなことがあっては、悲しいですので。

皆さんのお役に立てれば嬉しいです。楽しいワインライフを!